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子どもが社会に出るまでの教育費はいくら必要か。進学プランにより異なる教育費。

出産/子育て

  • 投稿日:2022.09.08

子どもの教育にはお金がかかると言われ、教育費の準備を理由に出産に対して不安を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。では実際に、子どもが生まれてから社会人になるまでの教育費はいくらくらい必要になるのでしょうか。子どもが幼稚園から大学を卒業するまでに必要な教育費の金額を算出し、その準備方法にはどのような方法があるかについて解説します。

高校や大学に進学するのは何割くらい?

 わが国では、小学校と中学校は義務教育です。高等学校は義務教育ではありませんが、中学校卒業者のほとんどが高等学校への進学を希望します。令和3年の学校基本調査をみると、中学校を卒業した約105万人のうち、98.9%を占める約104万人が高校に進学しています。
 また、高校卒業後の進路には進学と就職の選択がありますが、令和3年の学校基本調査をみると高等学校(全日制・定時制)を卒業した約101万人のうち、就職が17.3%の約16万人、大学等への進学者は57.4%の約58万人、専修学校(専門課程)進学者が17.3%の約18万人、つまり、高等学校卒業者の半数以上が4年生の大学に進学する時代となりました。
また、大学卒業者の約58万人のうち74.2%の約43万人が就職を選択しています。
子どもが小さいご家庭や、これから子どもを持とうと考えている場合、子どもは高等学校卒業後も進学を希望することが主流であると理解し、自分の子どもは大学まで進学すると仮定して教育費の準備を行うことが望ましいといえます。

学校卒業後の進路
卒業者数進学者数進学者割合就職者数就職者割合
中学卒業105万2489人104万730人98.9%1,664人0.2%
高校卒業101万2007人大学等
58万550人
専修学校等
17万5,185人
大学等
57.4%
専修学校等
17.3%
15万9,126人15.7%
大学卒業58万3,518人6万8,776人11.8%43万2,790人74.2%
 【出典】令和3年度学校基本調査(確定値)の公表について(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/content/20211222-mxt_chousa01-000019664-1.pdf 

幼稚園から高等学校卒業までの学習費

ほとんどの子どもが高等学校へ進学することから、まずは、幼稚園から高等学校を卒業するまでの学習費を平成30年の子供の学習費調査の結果を基に算出しました。

幼稚園から高校までの平均的な学習費

 平成30年度子供の学習費調査の結果より、1年間の学習費総額は、公立幼稚園が約22万円、私立幼稚園が約53万円、公立小学校が約32万円、私立小学校が約160万円、公立中学校が約49万円、私立中学校が約141万円、公立高等学校(全日制)が約46万円、私立高等学校(全日制)が約97万円です。
 月額に換算すると、公立幼稚園は約2万円、公立小学校は約3万円、公立中学校と公立高校では約4万円となります。公立に進学する場合、毎月の家計から2万円から4万円が1人の子どもの学習費として支出が見込まれることになります。
 学習費の支出の特徴としては、子どもが2人になると2倍、子どもが3人になると3倍必要になることと、子どもが生まれたときにいつ進学するかの年月が決まってしまうことです。物の購入であれば「買うのは来年にしよう」と先送りすることができますが、進学の場合は「子供を中学校に行かせるのは数年先にしよう」のような先送りはできません。

学校種別子どもの学習費総額(平成30年度)   (単位:円)
幼稚園小学校中学校高等学校
公立私立公立私立公立私立公立私立
学校教育費120,738331,37863,102904,164138,9611,071,438280,497719,051
学校給食費19,01430,88043,72847,63842,9453,731
学校外活動費83,895165,658214,451646,889306,491331,264176,893250,860
学習費総額223,647527,916321,2811,598,691488,3971,406,433457,380969,911
【出典】平成30年度子供の学習費調査の結果について
https://www.mext.go.jp/content/20191212-mxt_chousa01-000003123_01.pdf

私立か公立か進学コースによる幼稚園入園から高等学校卒業までの学習費

 幼稚園入園から高等学校卒業までの平均的な学習費より、私立を選択するか公立を選択するかで1年間の学習費総額に金額の差があることが分かります。つまり、私立と公立のどちらの進学コースを選択するかによって15年間の学習費総額が異なってきます。
 すべて私立を選択すると幼稚園から高校卒業まで約1,830万円かかり、すべて公立を選択したときの約541万円と比較すると約3.4倍の学習費がかかることになります。公立進学では毎月の家計から2万円から4万円が1人の子どもの学習費となりますが、すべて私立へ子どもを進学させたい場合には、毎月10万円以上の学習費の支出を想定しておく必要があります。
 さらに、小学校入学時は学習机やランドセル、文具などの購入費用、中学校や高等学校への進学時は制服や学生カバンなどの購入費要も必要になります。

幼稚園入園から高等学校卒業までの学習費総額
進学プラン幼稚園(3年)小学校中学校高等学校合計
すべて公立公立公立公立公立5,410,082円
幼稚園だけ私立私立公立公立公立6,345,771円
高等学校だけ私立公立公立公立私立6,942,240円
幼稚園・高等学校が私立私立公立公立私立7,877,929円
小学校だけ公立私立公立私立私立10,632,988円
すべて私立私立私立私立私立18,298,324円
【出典】幼稚園から高等学校卒業までの15年間の学習費総額
https://www.mext.go.jp/content/20191212-mxt_chousa01-000003123_03.pdf

進学のための通塾などの費用

 家計に余裕はないものの、子どもが私立の中学校や中高一貫教育の中学校を進路として希望した場合に、保護者が中学受験を認めるケースもあります。中学校受験を目指す場合には、小学校4年生頃から塾通いを始めるのが一般的です。中学受験の塾代等は通塾先により異なりますが、小学校4年生や小学校5年生は年間60万円程度、小学校6年生では年間100万程度が塾代や塾への交通費等で必要と考えておきましょう。
 高校受験は中学2年頃から塾通いが始まるのが一般的です。部活動を行っている場合などは中学3年生の夏休みから本格的な受験勉強となり、中学3年生は夏季講習や冬季講習等も含めて50万円~100万円程度と見込んでおきましょう。なお、中学生のほとんどが高校受験を行うため、高校受験向けの塾は数や種類が多いことや、通信教育や独学で高校受験に臨む中学生もいますので、塾代にいくらかけるかは家庭により差が出ます。
 また、高等教育は望むが浪人はさせたくないと、現役で大学進学させるために高校1年生から予備校などに通塾させることもあります。高校3年生は高等学校の学習費と塾代に加えて、受験費用や受験会場に行くための交通費、受験のための宿泊費などもかかることがあります。さらに、大学等に合格するとその後すぐに入学金の支払いを求められるなど、高校3年生は教育費にかかる費用の支出が大きくなる年でもあります。

大学や専門学校等への進学

高校卒業者の半数以上が大学等へ進学、専修学校も加えると高校卒業者の4人に3人が進学を選択します。それでは、大学等に進学する場合は大学に納める学費やその他の生活費などがどのくらい必要となるかを確認しましょう。

大学や専修学校等へ納める学費

 令和3年度の私立大学(学部)における授業料は約93万円、入学金は約25万円、施設設備費は18万円であり、これらを合算した平均の初年度学生納付金は約136万円になります。専修学校では、授業料が約69万円、入学金が約18万円、実習費が約12万円、設備費が約20万円であり、これらを合算した平均の初年度納付金は約126万円になります。
 大学や専修学校は進学する学部や学科により納付額が大きく異なります。私立大学では医歯系に進学すると初年度納付金が500万円近く、専修学校でも医療関係に進学すると初年度納付金が300万円近くになることもあります。大学や専修学校で何を学び、その後の就職などにどのように活かすのか、希望する進学先に進学した場合に卒業までの学費がいくらなのかも含めて、子どもと話し合うことも大切になります。

私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果     (単位:円)
区分授業料入学料
(入学金)
施設設備費合計
国立大学535,800282,000817,800
私立大学
(学部)
文科系学部815,069225,651148,2721,188,991
理科系学部1,136,074251,029179,1591,566,262
医歯系学部2,882,8941,076,278931,3674,890,539
その他学部969,074254,836235,7021,459,612
平均930,943245,951180,1861,357,080
大学院等博士前期課程
(修士課程)
776,040202,59876,2061,054,844
博士後期課程
(博士課程)
628,729189,62351,842870,194
【出典】私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/1412031_00004.htm

【参考資料】令和2年度 専修学校各種学校調査統計資料
   ※無断転送不可のため概要報告を記事に使用する際は著作権の確認が必要です。
    そのため表形式での資料の提示はせず、文書のみとしています。
https://tsk.or.jp/info/rule.php

大学や専修学校への進学時の生活費等

 大学や専修学校などに進学すると、学校への納付金以外に、進学のための交通費、専門書などの書籍代やスマートフォンなどの通信費がかかります。自宅からの通学が難しい場合は下宿したりアパートを借りたりするための住宅費などもかかります。学費や生活費を支払うために、学生本人がアルバイトをしたり、奨学金を利用したりしますが、自宅通学では親からの小遣い、自宅外通学では親からの仕送りもされています。
 自宅通学生の1ヶ月の生活費の内訳は食費や交通費、娯楽費などで、貯蓄等を除き4万万円程度であり、親からの1万円程度の小遣いを渡してやりくりしているのが平均です。自宅外通学生の1ヶ月の生活費の内訳は住居費と食費の支出が多く、貯蓄等を除き11万円程度かかります。そのうち、平均して親から7万円程度仕送りを受けています。
 自宅外通学は自宅通学よりも生活費がより多くかかることから、自宅から通学できる範囲の進学先を子どもに選択させるケースもありますし、自宅でも自宅外でも構わないので子どもの希望を最優先して進学先を選択するというケースもあります。

【参考資料】第57回学生生活実態調査 概要報告
※無断転送不可のため概要報告を記事に使用する際は著作権の確認が必要です。
 そのため表形式での資料の提示はせず、文書のみとしています。
https://www.univcoop.or.jp/press/life/report.html

教育費の準備方法

子どもは高等学校卒業後に大学や専門学校等に進学する前提で、子どもが幼いころから進学するための教育費の準備を始めます。教育費の準備方法の主なものは、預貯金や保険、投資などです。また、事前に教育費の準備をしても実際に不足する場合には、奨学金や教育ローンを利用します。

預貯金で準備する

 教育費を、普通預金や定期預金・積立定期などで、準備する方法があります。普段の生活費の口座の中で教育資金を貯めていこうとすると、気づかないうちに生活費として支出し、将来の教育費にするお金が貯まらないことがあります。そこで、教育費を貯めるための口座を新たに作り、作った口座に毎月振り替えるようにします。積立型の定期預金など毎月決められた日に、一定額を自動で振り替えるようにすることも継続するための方法です。
 なお、勤務先に勤労者財産形成促進法に基づく貯蓄制度がある場合には、積立て開始時の年齢制限や資金使途に制限のない一般財形貯蓄を給与天引きで積み立てることで教育資金として活用することができます。

保険で準備する

 学資保険やこども保険などは、貯蓄型の保険のしくみを活用して進学資金を貯めるもので、民間の保険会社が扱っています。保護者などの契約者に万一のことがあった場合でも満期保険金が受け取れるなどの保障がついているのが特徴です。
 現在の日本は金利が低いこともあり、学資保険やこども保険では、思ったようにお金が増えないこともあるため、日本よりも金利が高いアメリカの米ドルなどの外貨で運用する終身保険も進学資金の準備として活用することも可能です。金利は高くはなりますが、円高や円安などの為替の変動によって保険料の支払額や保険金の受取額に影響を受けます。例えば保険料が月100ドル保険に加入すると、1ドルが100円だと保険料は1万円ですが、1ドルが130円になると毎月の保険料が1万3千円に増えることになります。保険金を受け取るときにも同様に為替の影響を受けます。
 貯蓄型という名称ではありますが、保険商品で教育資金を貯める場合は元本割れする可能性などのリスクがあることを理解してから加入を決めましょう。

投資で準備する

 つみたてNISAやジュニアNISAなどの積立型の投資信託を活用して、教育費を準備する方法もあります。ジュニアNISAは子どもが18歳になると引き出しが可能となり、受け取る配当金や分配金、譲渡益が非課税となる制度です。平成28年(2016年)1月にスタートしたジュニアNISAは新規の口座開設が令和5年(2023年)までとなっていますので、教育資金にジュニアNISAを活用したい方は早めの申込が必要です。
 NISA以外でも、投資信託や株式などを活用して、教育資金を貯める方法もあります。投資は、株価などが上がって利益を得られることもありますが、同時に元本割れするリスクもあります。

奨学金や教育ローンを活用する

 貯蓄や保険、投資などで事前に進学のためのお金の準備をしても、いざ進学となったときに子どもが希望する進路が変わるなど準備したお金よりも進学資金の方が多くなるなど、進学資金が不足することもあります。
 進学資金が不足する場合には、奨学金や教育ローンを利用します。奨学金と教育ローンの大きな違いは、貸与型の奨学金は進学する子ども本人がお金を借りて返還を行う、教育ローンは保護者が借りて保護者が返済するという点です。主に、大学に進学する前に必要な受験料や入学金は入学前に教育ローン、大学進学以降の学費の支払い奨学金を利用されます。
 奨学金は、貸与型以外に返還不要の給付型もありますが、保護者の収入基準と資産基準、かつ、子ども本人の学業成績などが加味されます。

まとめ

大学まで進学する子どもが増えていることから、子どもの教育費は大学卒業まで必要になると考え、幼稚園から大学等を卒業するまでにいくらくらいお金が必要か、自分の子どもに進ませたい進学コース毎の教育費のおおよその目安を知っておきましょう。そして、子どもが進学したいと希望したときに、お金がないからと進学をあきらめさせることをできるだけ避けられるように、子どもが小さいころから教育費を貯めるようにしておきましょう。

杉浦 詔子 / みはまライフプランニング代表

この記事を書いた人
杉浦 詔子 / みはまライフプランニング代表

この記事を書いた人
杉浦 詔子 / みはまライフプランニング代表

ファイナンシャルプランナー/産業カウンセラー/キャリアコンサルタント 2005年にCFP®資格を取得、2012年に「みはまライフプランニング」を設立。「働く人たちを応援するファイナンシャルプランナー/カウンセラー」として働く人とその家族のキャリアプラン(生活)とライフプラン(家計)の相談と講義、執筆を行う。仕事や恋愛のコミュニケーションに関する支援にも対応。