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主婦が働くなら年収103万円と130万円、どっちが得なの?106万円・150万円も解説

給料/年収

  • 投稿日:2022.03.07
  • 更新日:2022.03.25

子育てもひと段落ついたことだし、家計を助けるためにもライフスタイルに合わせて働いてみようと考える主婦の方も多く見られます。しかしその際、「103万円の壁」や「130万円の壁」などの違いがよく分からないという声が多いのも事実です。「○○万円の壁」には他にも、「106万円の壁」や「150万円の壁」があります。これらの内容を理解して働かないと、税負担や社会保険料負担の増加を招くことになり、結果的に収入よりも負担の方が多くなってしまうといった結果になりかねません。そのようなことにならないよう、今回はこれらの壁についてFPが詳しく解説します。

年収103万円は税金の壁。所得税がかからない

まず、それぞれの壁の内容について簡単に紹介します。

103万円の壁所得税が非課税となる年収の上限
106万円の壁社会保険の加入対象となる年収の上限
130万円の壁夫の社会保険に加入し続けることができる年収の上限
150万円の壁配偶者特別控除を最大限まで利用できる年収の上限

年収が103万円を超えると、所得税の課税対象になります。所得税の課税対象になるのは、給与収入から給与所得控除額を引いた額が、給与所得控除額である48万円よりも多くなる場合です。給与所得控除額は給与収入によって異なりますが、最低控除額は55万円です。

したがって、年収103万円-給与所得控除額55万円-給与所得控除額48万円=0円となり、所得税は課税されません。

配偶者の所得が48万円以下なら、扶養している方も配偶者控除が適用に

また、年収が103万円以下であれば、扶養している側に配偶者控除が適用されます。例えば給与収入が103万円だった場合、給与所得控除額(55万円)を差し引くと、48万円が所得金額になります。そして、配偶者の所得金額が48万円以下であれば、扶養している側には以下のとおり配偶者控除が適用されます。

ちなみに配偶者控除額は、扶養している側の合計所得金額によって異なる点に注意が必要です。また、扶養している側の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、配偶者控除の適用を受けることはできません。

【配偶者控除額】
扶養している側の
合計所得金額
控除額
一般の控除対象配偶者老人控除対象配偶者※1
900万円以下38万円48万円
900万円超950万円以下26万円32万円
950万円超1,000万円以下13万円16万円

※出典:国税庁「配偶者控除」
※1 老人控除対象配偶者:その年の12月31日時点で70歳以上の人

配偶者特別控除ってなに?配偶者控除との違いは?

まず、配偶者控除と配偶者特別控除の違いについて見ていきましょう。

配偶者控除配偶者特別控除
控除額最大48万円最大38万円
配偶者の合計所得金額が
48万円以上
適用なし適用あり
控除額の算定基準扶養する側の合計所得金額配偶者の所得金額および
扶養する側の所得金額

配偶者特別控除は、配偶者控除の適用を受けられない場合(配偶者の合計所得金額が48万円超~133万円以下)に適用されます。また配偶者控除と同様に、扶養する側の合計所得金額が1,000万円を超える場合は適用されません。

配偶者特別控除額については、以下のとおりとなっています。

【配偶者特別控除額】
配偶者の
合計所得金額
扶養する側の合計所得金額
900万円以下900万円超
950万円以下
950万円超
1,000万円以下
48万円超
95万円以下
38万円26万円13万円
95万円超
100万円以下
36万円24万円12万円
100万円超
105万円以下
31万円21万円11万円
105万円超
110万円以下
26万円18万円9万円
110万円超
115万円以下
21万円14万円7万円
115万円超
120万円以下
16万円11万円6万円
120万円超
125万円以下
11万円8万円4万円
125万円超
130万円以下
6万円4万円2万円
130万円超
133万円以下
3万円2万円1万円

※出典:国税庁「配偶者特別控除」

年収103万円以下でも住民税はかかる!?

年収が103万円以下であれば所得税の課税対象外となることは、上で述べたとおりですが、住民税の課税対象になる点に注意が必要です。所得税額の算出方法と住民税額の算出方法は異なるため、ここでしっかりと理解しておきましょう。

住民税には、「所得割」と「均等割」の2種類があります。「均等割」とは、所得金額にかかわらず、定額で課税されます。ちなみに東京都の場合、都民税額は1,500 円、個人区市町村民税額は3,500 円です。そして、「所得割」は、前年の所得金額に応じて税額が計算されますが、35万円の非課税限度額がありますので、他に収入がなく、パートによる給与収入が100万円以下なら所得割はかかりません。

最終的にそれぞれの合計額を住民税額として納める必要がありますが、算出方法は各自治体によって異なりますので、お住いの自治体の公式サイトで確認することをおすすめします。

年収130万円は「社会保険の壁」

年収が130万円を超えると、夫の社会保険から外れて自分で社会保険に加入しなければなりません。上で述べた103万円の壁は所得税が課税されるかどうかのボーダーラインで、130万円の壁は社会保険に加入する必要が発生するかどうかのボーダーラインだと理解してください。ここでいう社会保険とは、「厚生年金」そして「健康保険」です。そして加入できるかどうかについては、以下の要件に当てはまるかどうかで判断します。

● 1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上である
● 勤務先の従業員数が501人以上である
● 労働時間が週20時間以上である
● 月の収入が8万8,000円以上である
● 継続して1年以上雇用されることが決まっている

また、要件に当てはまらない場合は、自身で国民年金や国民健康保険への加入が必要であることや、要件に当てはまってはいるものの、130万円以下でも加入しなければいけないケースもある点に注意が必要です。

パート先によって年収106万円でも社会保険に加入しなければいけない?

社会保険の壁には、上で述べた130万円の壁と106万円の壁があります。具体的には、以下の要件をすべて満たす人は年収が130万円以下でも社会保険に加入する必要が発生します。

(要件)
2016年10月1日より適用
(ただし、学生は除く)
・所定労働時間が週20時間以上であること
・1年以上の勤務期間が見込めること
・ひと月の賃金が8万8,000円以上であること
・従業員規模が501人以上の企業に勤めていること
2017年4月1日より適用上の要件を満たしている従業員規模500人以下の企業で、労使の合意があること

さらに、今後は以下のとおり加入要件の拡大が予定されています(学生が除外される点は引き続き適用予定)。

2022年10月~従業員規模を101人以上に緩和
・所定労働時間が週20時間以上であること
・2年以上の勤務期間が見込めること
・ひと月の賃金が8万8,000円以上であること
2024年10月~従業員数51人以上に緩和

要件に「ひと月の金額が8万8,000円以上であること」とあるとおり、8万8,000円×12カ月=106万円になり、106万円以上で「労働時間」や「勤務期間」、さらには「勤め先の従業員人数」など、ほかの要件に当てはまる場合は社会保険の加入が必要です。

自分で社会保険に加入したいなら年収130万円以上稼ごう!

では、103万円以内で働くケースと130万円以内で働くケースを比べた場合、どちらがお得なのでしょうか。

まず考えることは、「扶養範囲内で働きたいかどうか」です。扶養範囲内で働きたいのであれば、年収を103万円以内に収める必要があります。また、勤務先が社会保険の適用事業所となっておらず、社会保険に加入できない場合であれば、そのまま夫の社会保険に加入でき、さらに配偶者控除も適用されるため、103万円以内で働く方がいいでしょう。

逆に、ある程度時間の融通が利くパートもしくはアルバイトとして働きたい場合で、かつ勤務先の社会保険に加入できる人、また社会保険に加入しなくても年収103万円より手取り額を少しでも増やしたいと考える人は130万円以内で働くことを考えましょう。社会保険に加入することで将来受け取れる年金額が増えることや、病気やケガによって一定の障害になった場合に受給できる、障害年金の認定基準の範囲が広くなるというメリットがあります。

ただし年収130万円(介護保険料負担なし、扶養なし)で社会保険に加入した場合、その保険料負担は1万5,477円です。したがって、手取り額が約10万9,000円から約9万3,000円に減ることになる点に注意しておきましょう。そのためにも、できれば保険料負担額と収入額が逆転する年収150万円以上を目指して働くことをおすすめします。

パートで社会保険に加入するなら150万円以上

上で述べたとおり、年収130万円で社会保険に加入すると月々の手取り額が減ってしまいます。しかし、年収が150万円以上になると確実に手取り額は増えます。また年収が198万円以上になると、夫の配偶者特別控除額が減り、夫の税負担が上がってしまう点には注意する必要はありますが、できる限りの柔軟な働き方を工夫していきましょう。

ちなみに年収150万円(月収12万5,000円、介護保険料負担なし、扶養なし)の場合、社会保険料や税金などが控除されると、月の手取り額は10万5,000円ほどです。したがって、年収150万円で社会保険に加入することで、将来受給できる年金額を増やすことができ、かつ、年収130万円のときと手取り額は変わらない状態を作ることができます。また、配偶者特別控除は配偶者の所得に応じて段階的に控除が下がる仕組みとなっていることから、妻の給与収入が198万円以下で、夫の合計所得金額が900万円以下だと、38万円の配偶者特別控除が受けられ、夫の税負担も発生しないボーダーラインとなります。

【番外編】学生はいくらまで稼いでいいの?

少し本題から外れてしまいますが、ここで「夫が扶養している子どもがアルバイトなどでいくらまで稼げるのか」についても理解しておきましょう。なぜなら、子どもの収入額によっては、扶養控除の適用から外れる可能性があるからです。

扶養控除の対象となる子どもとは、「納税者と生計を1つにしており」、「年間の合計所得金額が48万円以下」である「16歳から23歳まで」の子どもです。したがって、アルバイトなどで得た収入が103万円を超えると、扶養控除の適用を受けることができません。ただし、親の扶養から外れて、子ども自身で納税する場合は、27万円の勤労学生控除が適用される点も覚えておきましょう。この場合、年収130万円以内なら所得税の課税対象外ですが、社会保険への加入ができない点には注意が必要です。

4つの壁を理解すれば、お得な働き方がわかる!

夫婦で働く際には、今回説明した4つの壁をしっかりと理解し、「勤務先での社会保険への加入」や、「1週間に勤務可能な日数や時間」などさまざまな条件を考慮しながら、どの年収ラインを目指すのかを考えましょう。家事や子育てとの両立、今後のライフスタイル、さらには自分が持っている将来に向けた目標などについて夫婦でじっくり話し合うことで、自ずと自分にあった働き方が見えてくるはずです。

新井智美/トータルマネーコンサルタント

この記事を書いた人
新井智美/トータルマネーコンサルタント

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新井智美/トータルマネーコンサルタント

コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)のほか、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に、金融メディアへの執筆および監修にも携わっている。現在年間300本以上の執筆及び監修をこなしており、これまでの執筆及び監修実績 は2,000本を超える。