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年収400万円と年収800万円の手取りはいくら?年収で家計を考えるのは危険?

家計/貯金

  • 投稿日:2022.06.29
  • 更新日:2022.06.30

年収が800万円でも生活が苦しいという声を聞くことがあります。例えば年収400万円の人が、倍の年収800万円になった際にもやはり生活は苦しいと感じるものなのでしょうか。年収とはあくまでも総支給額であり、そこから社会保険料や税金が引かれた手取りで生活していかなければなりません。そのためにも年収と手取りの違いや、年収だけで家計を考える際の注意点についても知っておく必要があります。

年収と手取り額の違いとは?額面は何のことを指すの?

家計の収支を考える上で、年収と手取り額の違いを理解しておくことは大切です。また、「額面」といわれるものはどのようなものなのでしょうか。あわせて解説します。

年収と手取り額の違い

年収手取り額
会社から支給される給与総額(基本給与や各種手当などが含まれている)実際に給与口座に振り込まれる額(給与総額よりも少なくなる)

年収とは、企業が従業員に対して支払う総支給額のことで、それには各種手当てや残業代も含まれています。しかし、私たちはその支給全額を受け取れるわけではなく、支給額から以下のものが差し引かれて給与口座に振り込まれます。

  •  ・社会保険料
  •  ・所得税
  •  ・住民税 など

この振り込まれた額が実際に手元に入る給料、つまり手取りです。そのため、総支給額よりも手取り額は少なくなります。総支給額から差し引かれる代表的なものは以下のとおりです。

社会保険料・国民年金保険料
・厚生年金保険料(給与に応じて算出された額)
・健康保険料(給与に応じて算出された額。40歳以上になるとさらに介護保 険料負担が発生する)
所得税所得税については1年の始めにそのときの階級や前年の勤務実績などを元に概算で計算したものを利用する。そのため、年末調整で過不足分を清算することになる。
住民税前年の所得に応じて計算された額が毎年5月頃に市区町村から企業に通知される。会社はこの通知内容を元に毎年6月から翌年5月までの給与から差し引く。

ちなみに、住宅ローンなどの審査で利用されるのは手取り額ではなく年収です。

年収と手取り額の違いを知る意味って?

なぜ年収と手取り額の違いを知っておく必要があるのでしょうか。

年収と異なり、手取り額は実際に手元に入ってくるお金です。そのため、生活費や娯楽費は年収ではなく、年収から所得税や社会保険料などの費用が差し引かれた手取り額から捻出しなければなりません。

また、年収によって差し引かれる社会保険料や所得税・住民税は異なります。一般的に年収が増えるにつれ、差引かれる社会保険料や所得税、住民税は多くなります。年収が倍に増えても、手取りが倍に増えるわけではないため、手元にいくら残るのかを把握しておきましょう。

手取り額は個人の状況によって異なる点に注意

年収が同じだからといって、手取り額が同じになるわけではありません。手取り額はその人の状況によって異なります。例えば、配偶者がいれば配偶者控除が受けられるため、所得税額の負担が独身の人と比べて少なくなります。

さらに賞与の額は企業の業績やその人個人の評価によっても変わってくるでしょう。賞与の額は社会保険料にも反映されるので、賞与額が多ければ引かれる社会保険料額は大きくなります。

年収400万円と年収800万円の手取り額はそのまま2倍になる?

年収400万円と年収800万円の手取り額の差はどのくらいなのでしょうか。実際の手取り額を計算してみましょう。

年収400万円の手取り額

一般的な年収400万円の手取額は、約315万円~330万円といわれています。つまり、年収から約70万円~85万円が引かれていることになります。ただ賞与の有無や賞与の額、そして適用される控除の種類やその控除額によって手取り額は変わります。そのため、あくまでも目安にとどめておきましょう。

年収800万円の手取り額

では、年収が倍の800万円になった場合の手取り額はいくらになるのでしょうか。一般的な年収800万円の人の手取り額は約590万円~600万円です。年収は倍になっているものの、手元に残るお金(手取り額)は倍になっていないことがわかります。

年収から引かれる金額は約200万円~210万円となっており、年収400万円の人が約70万円~85万円引かれており、倍以上の金額が引かれていることになります。多額の金額が引かれる理由は、支給額によって計算される社会保険料や所得額が増えたことにより、所得税および住民税の額が増加することにあります。

【東京都】年収400万円の生活水準とは?住宅ローンは月にいくらまで支払える?

ここからは、東京都における年収400万円の生活水準と節約のポイントを解説します。

住居費(家賃)は東京都を基準に記載していますが、居住地によって家賃水準は異なります。そのため、住居費についてはご自身が住んでいる地域の水準を参考に、それ以外の費用についてはこの記事の内容を参考にしてください。

【東京都】年収400万円の生活水準

【単身世帯】
家賃7万円
食費4万6000円
水道光熱費1万円
趣味・娯楽費2万6000円
通信費2万3000円
雑費2万8000円

【配偶者・子どものいる世帯】
家賃10万円
食費6万7000円
水道光熱費1万9000円
趣味・娯楽費2万5000円
通信費3万1000円
雑費3万7000円

単身世帯の場合は、家賃や食費が少なくてすむ分、貯蓄に回せる割合が大きくなります。しかし配偶者や子どもがいる場合は食費の増加や、子どもの教育費用も想定しておかなければなりません。

【東京都】年収400万円の人の節約術

厚生労働省の調査によると、日本の年収中央値は437万円で、年収400万円は平均的な年収といえます。貯金については手取りの10%を目標に、もし余裕があるならば20%を目指しましょう。年収400万円の人の手取り額は約315万円~330万円で、月の手取り額は約27万円なので、約3万円を貯金に回したいところです。毎月貯金をするためには、家計の見える化を行なうことがポイントです。

具体的な節約方法としては、家計簿をつけたり、会社の財形貯蓄制度を利用して貯金に回しましょう。配偶者そして子どもがいる場合は、今後の教育費用がどのくらい必要になるかを考え準備しておく必要があります。

家計の見直しで有効なのは固定費を見直すことです。例えば生命保険を見直すことで、不要な保険は解約することができ、その分貯金に回せます。そして貯金にある程度の余裕ができた場合は、iDeCoやNISAなど非課税で運用できる制度を取り入れることも、資産を増やしていく方法の一つです。

【東京都】年収800万円の生活水準とは?住宅ローンは月にいくらまで支払える?

同様に年収800万円の生活水準も見てみましょう。あわせて節約のポイントについても解説します。

【東京都】年収800万円の生活水準

【単身世帯】
家賃15万円
食費5万8000円
水道光熱費1万円
趣味・娯楽費3万2000円
通信費3万2000円
雑費4万3000円

【配偶者・子どものいる世帯】
家賃15万円
食費8万円
水道光熱費2万円
趣味・娯楽費4万5000円
通信費4万6000円
雑費5万2000円

独身の場合、食費や水道光熱費が多くかからないため、その分家賃に回すことができます。さらに、手取り額によってはその20%以上を貯金に回すこともできるでしょう。年収800万円であれば家賃は15万程度なので、住宅ローンを組んだ場合、毎月の返済額は12万円~15万円程度に抑えることが大切です。

【東京都】年収800万円の人が節約するには?節税対策も重要!

貯金額は年収400万円と同様に手取りの10%、余裕があれば20%を目指したいものです。年収800万円の人の手取り額は約590万円~600万円で、月に換算すると約50万円です。そのため、最低でも5万円は貯金に回すようにしましょう。

気をつけたいことは、年収800万円だからといって、贅沢な暮らしができると考えないことです。年収800万円となると所得税も高くなりますので、節税対策にも目を向けることが大切です。節税対策として考えられるのは、iDeCoやNISA、ふるさと納税の活用です。住宅を購入する予定があるなら、住宅ローン控除の適用も考えてみましょう。

【年収400万円・年収800万円】もらえる年金額は?

年収400万円と年収800万円の人では、将来もらえる年金額にどのくらいの差があるのでしょうか。年金受給額を想定しておくことで、今の生活水準や老後資金のためにどのくらい貯蓄に回したほうがよいのかの目安にもなります。

年収400万円の人がもらえる年金額を計算してみましょう

国民年金(老齢基礎年金)は満額受け取れると仮定し、厚生年金保険の加入期間が40年(平均年収400万円)だった場合、65歳からは老齢基礎年金(約78万円)と老齢厚生年金(約88万円)を合わせた約166万円、月額に換算すると約13万円~14万円を受給できる計算となります。

年収800万円の人がもらえる年金額を計算してみましょう

上と同じ仮定で、厚生年金保険の加入期間が40年あり、その間の平均年収が800万円の人が受け取れる年金額は約223万円、月額に換算すると18万円~19万円です。平均年収400万円の人と比べ、約1.3倍の受給額となります。

年収400万円の場合と年収800万円の場合の受給できる金額は、本人が受け取れる金額です。もし配偶者がいて専業主婦だった場合、配偶者の老齢基礎年金(月額約6万円)が加算されることも覚えておきましょう。

知っておきたい年金のこと

2022年の年金受給額は、前年と比べ0.4%引き下げられることになりました。年金受給額は今後も増減するため、あくまで想定額として老後の資金計画を考える必要があります。仮に今から貯金をしても老後に必要な生活資金に満たないと不安に思う人は、年金の繰り下げ受給なども視野に入れておきましょう。

受け取れる年金額が減ったとしても慌てることのないよう、今から無理のない節約を心掛け、必要に応じて節税対策を行なうことも大切です。また、老後資金の形成については、貯金だけでなくお金を運用することも効果的です。

老後までの期間が長いなら、つみたてNISA制度の利用、もしくはiDeCoへの加入を検討してみてはいかがでしょうか。ただし運用を行なう場合は、家計に負担がかからないよう、余剰資金で行なうことを忘れないようにしてください。

家計のやりくりは無理のない節約と節税対策がポイント

家計を上手くやりくりするコツは、まず家計を見直して、無駄なものや不要なものから削っていくことです。例えば、あまり利用していないサブスクリプションやなんとなく通っているカフェ代など、「特になくても大丈夫」と思えるものはありませんか。そのような節約の積み重ねが大きな節約につながっていきます。

また、「絶対に必要」と思っているものでも、同じ機能で安いものに替えることができないか検討してみましょう。スマホを格安SIMにする、もしくは保険を見直すといったことも有効です。さらに、年収が上がるにつれ、社会保険料や所得税などの負担が増えるため、節税対策を意識することも重要なポイントです。

どのように節約したらよいのか、他にできることはないかなど、家計の改善などについて悩んでいる人は、節約を実践している友人やFPのような専門家に相談してみましょう。

参考 総務省|家計調査報告(単身者・二人以上の世帯)2021年平均
   厚生労働省|令和4年度の年金額改定について

新井智美/トータルマネーコンサルタント

この記事を書いた人
新井智美/トータルマネーコンサルタント

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新井智美/トータルマネーコンサルタント

コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)のほか、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に、金融メディアへの執筆および監修にも携わっている。現在年間300本以上の執筆及び監修をこなしており、これまでの執筆及び監修実績 は2,000本を超える。