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住宅ローンの借入金額の目安は?年収からいくらまで借り入れできるか検討しよう

住宅/車

  • 投稿日:2022.03.09
  • 更新日:2022.03.25

住宅を購入したり買い替えをしたりする場合、住宅ローンを利用する人が多いです。ですが、いざ自分が利用しようとすると、借入金額や返済の目安はどのくらいなのか、それはどのように計算すればよいのかわからない人も多いのではないでしょうか。

今回は、住宅ローンの借入金額の目安や知っておきたい返済額を抑える方法、利用前に考えておきたいことをご紹介します。家を購入するのは、夢のあるライフイベントですよね。楽しいイベントで困ったことにならないように、事前に知っておきましょう。

住宅ローン借入金額の目安となる基準とは

民間の住宅ローンは、明確に借入金額の基準を公表していません。では、どのように借入金額の目安を把握すればよいのでしょうか。ここでは、住宅ローンの借入金額の目安となる基準を紹介します。

金融機関は年収の約8倍までを審査基準としている

住宅ローンには、民間の金融機関の住宅ローンと公的住宅ローンがあります。公的住宅ローンは借入限度額が少なく、物件に対する審査の条件が厳しいので、民間住宅ローンで借り入れをするのが主流です。ここで取り上げるケースも、民間の住宅ローンを前提にしています。

まずいくらまで借りられるかという点では、住宅ローン契約者本人に問題がない限り、年収の7〜8倍までであれば融資可能としている金融機関もあります。例えば400万円の場合、最大3,200万円まで融資可能ということになります。ただし、この数字はあくまでも借りられる融資額であって、必ず返済していける金額ではないため、そのまま限度額いっぱい借り入れするのはおすすめできません。

年収の何倍ではなく「返済負担率」が重要

一般的に返済していける住宅ローンの借入金額の目安は「年収の5倍」と言われます。ですが返済していくことを考えるには、年収よりも「返済負担率」を基準にするほうがよいです。

返済負担率とは、年収に対する年間返済額の割合のことです。例えば、全期間固定金利型のフラット35は、返済負担率を年収別に設定しています。具体的には、年収400万円未満は30%、年収400万円以上は35%という基準になっています。なお、この場合の返済負担率を計算するときの年収は手取りではなく、額面を基準としています。

年収に応じた返済負担率基準
年収400万円未満400万円以上
基準30%以下35%以下
年収350万円年収500万円
借入基準額105万円175万円
月額返済額約8.8万円約14.6万円

実際に借入している人の返済負担率は?

実際にローンを利用している人は、どのくらいの返済負担率となっているのか気になるところです。一般的に住宅金融支援機構の調査によると、返済負担率の平均は22.2%となっています。また国土交通省の調べでは、返済負担率の平均は全国平均で16%と報告されています。

これらのデータから見ると、借入をしている人は20%前後でおさめていることがわかります。人によって適切な返済負担率は異なりますが、20%前後だと無理なく返済できるといえそうです。返済負担基準は30%または35%とされていますが、理論的には可能であったとしても、家計が圧迫されてしまう可能性があります。長期的に返済していくことも考えて、限度額までの借入は避けたほうがよいでしょう。

出典:国土交通省「平成30年度住宅市場動向調査報告書」
住宅金融支援機構「2020年度 フラット35利用者調査」

限度額いっぱいに借りるメリットとデメリット

そうはいっても、購入したい物件の条件によっては、できれば限度額いっぱいで借り入れをしたい人もいるでしょう。ここからは、限度額いっぱいまで借りることのメリットとデメリットを紹介します。

メリットは物件の選択肢が増えること

借入限度額までローンを利用するメリットは、融資額が増えるため購入する物件の選択肢が増えることです。例えば、年収500万円の人であれば、計算上は約4,000万円まで、年収700万円の人だと約5,600万円借入ができることになります。

都市部のマンションでは、70㎡で中古価格でも6,500万円あたりで推移しています。都市部のマンションや駅近、最新の設備が入った物件など条件のよい物件を選択肢に入れられます。また将来売却を視野にいれている人であれば、売却しやすい、つまり買い手が見つかりやすい魅力的な物件を選ぶことができます。

参考元:東京カンテイ「三大都市圏・主要都市別/中古マンション70㎡価格月別推移」

デメリットはさまざまなリスクが想定されること

住宅ローンを限度額いっぱいに借りるデメリットは、不測の事態に備えられなくなってしまうということです。限度額いっぱいで借り入れをして、当初は返済可能でも、転職をして年収が下がってしまったなど、さまざまな理由で返済が難しくなることがあります。返済できなくなると最悪の場合、購入した不動産を手放さなければならない可能性があるのです。

日々の家計をやりくりするには、住宅購入費以外にも子どもの教育費や自分自身の老後資金も想定しておかなければなりません。また、住宅を購入すれば、メンテナンス費用や管理費、毎年の固定資産税などの支払いは必ず必要になります。最近では、転職や独立による年収の減少やコロナなどの影響で仕事が減少するなどを想定する必要もあるでしょう。ローンを変動金利で組んだ場合は、将来的に金利が上昇すれば返済費用も増える可能性があります。

このようなさまざまなリスクを考えると、限度額いっぱいまで借り入れをしたために、いざというときに家計が回らなくなる事態は避けたいです。そのため思わぬ出費や収入の変動に備えて、住宅ローンの返済には余裕を持たせておくことをおすすめしています。

借入金額のシミュレーション

4つの返済負担率で、年収別、返済期間別の借入金額のシミュレーションをしてみました。シミュレーションの条件は、以下の通りです。

● 金利:年1.1%
● 全期間固定金利
● 元利均等返済(この返済方法は返済当初はほとんど金利支払いに充てられ徐々に元金の返済にまわる仕組みになっています)

この表で、いくらまで借りるのが現実的なのか、具体的な借入金額をイメージしてみてください。

返済負担率20%の場合

年収(月の返済額)返済期間25年返済期間30年返済期間35年
300万円(月5万円)1,310万円1,532万円1,742万円
400万円(月6.7万円)1,756万円2,053万円2,334万円
500万円(月8.3万円)2,176万円2,544万円2,892万円
600万円(月10万円)2,621万円3,065万円3,484万円
700万円(月11.7万円)3,067万円3,586万円4,077万円
800万円(月13.3万円)3,487万円4,076万円4,634万円

出典:フラット35「毎月の返済額から借入可能金額を計算」

まず返済負担率20%の場合をまとめてみました。返済負担率が軽いため、借入金額はどうしても少なくなりますが、日々の家計を圧迫する可能性が低いローン返済計画となります。例えば年収400万円のケースでは月々の返済額は6.7万円となります。返済期間を長くすると、借入金額も増えていくので、今の手持ち資金や普段の家計状況、返済完了年齢などを考えてベストな組み合わせを選択しましょう。

返済負担率25%の場合

年収(月の返済額)返済期間25年返済期間30年返済期間35年
300万円(月6.3万円)1,651万円1,931万円2,195万円
400万円(月8.3万円)2,176万円2,544万円2,892万円
500万円(月10.4万円)2,726万円3,187万円3,624万円
600万円(月12.5万円)3,277万円3,831万円4,355万円
700万円(月14.6万円)3,827万円4,475万円5,087万円
800万円(月16.7万円)4,378万円5,118万円5,819万円

出典:フラット35「毎月の返済額から借入可能金額を計算」

返済負担率を5%上げただけでも、住宅ローンは長期間での返済になるため、借入金額も大きく変わることが確認できます。年収400万円で返済期間を35年まで延ばすと、2,900万円の借入が可能になり、物件選びの幅も広がるでしょう。具体的には、年収400万円の場合の月々の返済額は約8.3万円、20%の場合の月々の返済額6.7万円と比較しても約1万6000円アップしますが、家計の見直しをして工夫すればやりくりは可能だと考えられる人も多いのではないでしょうか。

返済負担率30%の場合

年収(月の返済額)返済期間25年返済期間30年返済期間35年
300万円(月7.5万円)1,966万円2,298万円2,613万円
400万円(月10万円)2,621万円3,065万円3,484万円
500万円(月12.5万円)3,277万円3,831万円4,355万円
600万円(月15万円)3,932万円4,597万円5,227万円
700万円(月17.5万円)4,588万円5,363万円6,098万円
800万円(月20万円)5,243万円6,130万円6,969万円

出典:フラット35「毎月の返済額から借入可能金額を計算」

返済負担率30%まで上げると、年収400万円の場合では、毎月の返済額が10万円となります。そのため、しっかり家計の見直しをして無駄な出費を抑える工夫が必要になってくるでしょう。また返済期間を35年にすると、3,484万円まで借りられるので物件選びが楽しみになりますが、長期間に渡って計画的に家計をやりくりすることも大切になってきます。

返済負担率35%の場合

年収(月の返済額)返済期間25年返済期間30年返済期間35年
400万円(月11.7万円)3,067万円3,586万円4,077万円
500万円(月14.6万円)3,827万円4,475万円5,087万円
600万円(月17.5万円)4,588万円5,363万円6,098万円
700万円(月20.4万円)5,348万円6,252万円7,108万円
800万円(月23.3万円)6,108万円7,141万円8,000万円
※貸付上限額

出典:フラット35「毎月の返済額から借入可能金額を計算」

返済負担率を35%まで上げると、年収400万円であれば、4,077万円まで借りられます。また年収800万円のケースでは、計算上は8,000万円以上借りられます。ですが住宅ローンは、最大8,000万円〜1億円までと設定されている金融機関が一般的なので、金融機関で利用できる限度額まで借り入れ可能となります。当然ですが、返済負担率が大きくなると月々の返済額も重くなりますので、あらかじめどこまで切り詰めることができるか、検討する必要があります。

手元にいくら残るか計算しよう

家計には、住宅ローン以外にも生活費や子どもの教育費、医療費などさまざまな費用がかかります。毎月の返済額を計算して、毎月の収入から生活費に加えてローン返済を引くと、手元にいくら残って、年間いくら貯金に回せるのかを計算してみましょう。その結果、手元に残るお金が十分にあれば年収の30%の借入でも可能でしょう。

貯金に回すことができないのであれば、返済負担率を下げて余裕を持たせるようにするほうが、健全でストレスの少ない家計運営になるでしょう。ローン返済は長期間にわたるため、借り入れをすることをきっかけにお金の使い方としっかり向き合うことが大切です。

返済額を少しでも抑えるコツ

住宅ローンの返済は20年以上に及ぶため、できれば負担感は軽いほうが望ましいものです。ここでは返済負担率を下げる以外に、ほかの方法で返済額を少しでも抑えるコツを紹介します。

金利の低い金融機関を選ぶ

返済額を少しでも抑える方法として、すぐに思い当たるのが、できるだけ金利の低い金融機関を選ぶことです。金利を比較する方法として、インターネット上でも金利ランキングなどで調べることができます。サイトで比較する際の注意点は、条件を満たしている場合の一番低い金利を紹介していることが多いことです。あくまでも参考として比較サイトを利用し、実際に自分自身で複数の金融機関を比較しましょう。

また、金利のタイプでも金利が異なります。例えば、変動金利のほうが固定金利よりも金利が低く設定されています。ただ、金利が上昇したときには返済額が増えるので、一概に変動金利がよいと言い切れません。

そして、金利水準だけで選ぶ際に注意したいポイントとして、1年の固定の時期でないと繰り上げ返済できない、繰り上げ返済に手数料がかかる、事務手数料が高い、といった金利以外のところで発生する費用です。金利だけでなく他の条件も確認するようにしましょう。

繰り上げ返済をする

繰り上げ返済をすることも、返済額を抑える方法として知られています。繰り上げ返済とはローンの残高の一部(一部繰上返済)、または全額(全額繰上返済、または完済)を返済することです。繰り上げ返済の方法には「期間短縮型」と「返済額軽減型」があります。

● 「期間短縮型」:繰り上げ返済する金額をすべて元金の返済に充てるため、返済期間が短縮された分の利息を節約できる
● 「返済額軽減型」:ローン完済までの期間はそのままで、毎月の返済額の負担を抑えられる

金融機関によっては繰り上げ返済をする際に手数料が必要なところもあります。繰り上げ返済をすることも想定して、繰り上げ返済の手数料についても借り入れをする前に確認しておきましょう。

給付金などを活用する

住宅ローンを利用することで、活用できる優遇制度がありますので、条件があえば積極的に活用しましょう。主な制度には「住宅ローン減税」と「すまい給付金」があります。これらを活用すれば金額の負担を軽減できるしょう。住宅ローン減税は、住宅を購入する際にローンを組んだ場合に、そのローンの年末残高の1%をその年の所得税の額から差し引く減税措置です。「すまい給付金」は年収の高くない人を対象に住宅を購入した人が現金をもらえる制度のことです。それぞれ詳しく確認します。

住宅ローン控除

住宅ローン控除とは、10年間毎年の住宅ローン残高の1%を所得税から控除する制度で、10年間で最大400万円(500万円)控除できます。またコロナ禍に伴う経済対策により、令和4年(2022年)末までに入居すれば、控除期間は最大13年まで延長されました。11年〜13年については、以下の1と2のうち、少ないほうが適用されます。

1. 年末時点の住宅ローン残高×1%
2. 建物購入価格×2%÷3

所得税から控除しきれない金額がある場合には、住民税の一部からも控除されます。ただし適用には条件があり、床面積が50㎡以上でなければなりません。2021年の改正で、床面積40㎡以上50㎡未満の住宅の場合、合計所得金額は1,000万円以下という項目が加わりました。

すまい給付金

すまい給付金とは、所得の少ない人の増税負担を緩和するための制度です。前に紹介した住宅ローン控除は住宅ローンの年末残高の1%相当額が、所得税や住民税から控除されるしくみです。最大控除額である年間40万円(50万円)を受けるには、所得税と住民税(上限13万6500円)を40万円以上納めていることが前提となります。年収が高くない世帯では住宅ローン控除のメリットを十分に活用できないという問題点を受けてつくられました。

年収の目安は775万円以下(※)の人が対象となっていますが、家族構成によって異なります。もらえる金額は、年収に応じて10万円~50万円までの5段階です。年収が低いほど給付額が大きくなり、年収450万円以下の場合は50万円です。ただしこれは目安です。個別の家庭事情や都道府県によっても変わりますので確認が必要です。給付金をもらうためには、すまい給付金のホームページから申請書類をダウンロードして、すまい給付金事務局へ郵送するか、住宅会社などに手続き代行を依頼することもできます。
※消費税8%時に住宅を購入した場合、年収510万円以下の人を対象に最大30万円が給付されます。

住宅ローンを借り入れる前に準備したいこと

10年後や20年後のことを想定するのは難しいでしょう。ただ、住宅ローンは長期間となるため、滞ることなく返済していきたいものです。計画的に返済をしていくためには、住宅ローンを借りる前の準備も大切です。ここでは住宅ローンを借り入れる前に準備したいことを紹介します。

家計を見直す

必ずやらなければならないことは家計の見直しです。普段何気なく使っている毎日の生活費を、住宅購入をきっかけに見直してみると、無駄な支払いがないか確認できます。家計と向き合うことは、生活費だけでなく老後資金や教育資金など、やがては考えなければならない資金計画についても検討するきっかけになります。 また、子どもの進路の方針なども想定しておくとよいでしょう。教育費は、進学先を私立にするか公立にするか、文系か理数系かなどで大きく変わります。あわせてせて退職金に手を付けなくても返済できるのかどうか、計算してみるといざというときに慌てなくてすみます。

他に借入がないか確認する

住宅ローン審査には、事前審査と本審査の2段階に分けられます。事前審査では申込者の収入や資産に対して、その物件を購入することに無理がないか、返済可能かといったことが審査されます。個人信用情報機関に照会して申込者の借り入れや返済の状況などを確認したり、住宅ローンの申し込みの情報が個人信用情報機関に登録されることへの同意を求められたりします。

個人情報機関への照会の結果、カードローンや自動車ローン等、他に借入がある場合は住宅ローンに合算されます。そのため年収の条件はクリアしていても、希望額が減らされてしまうこともあるので注意が必要です。もし、すでに他に借入がある場合には、手元の資金で返済できないか検討しておきましょう。

年収以外の審査基準も把握しておく

住宅ローンの審査は年収だけではありません。年収は基準を満たしていても借りられない場合があります。主な審査基準として、以下のような項目があります。

● 完済時の年齢
● 勤続年数
● 雇用形態
● 物件の担保価値
● 健康状態 など

上記の審査項目で、各金融機関の基準に満たせないため、審査が下りないというケースです。このうち、あらかじめ対策をたてやすい条件が勤続年数でしょう。転職したばかりのときはローンの審査通過のハードルが上がりますので注意が必要です。職種によっても審査に通りやすいかどうかが変わってきます。

また、誰かの借金の連帯保証人になっている、という場合も審査がスムーズに通過しなかったケースとして取り上げられています。このようにさまざまな要因をチェックされますので事前に把握しておきましょう。

住宅購入後にかかる費用も想定しておく

住宅は購入したらそれで終わりというわけではなく、快適に暮らしていくために維持費がかかります。一戸建てならばメンテナンス費用、マンションならば管理費や修繕積立金があります。また、一戸建てであってもマンションであっても、土地や建物を所有している場合には固定資産税や都市計画税がかかります。このような費用も想定しておく必要があります。

住宅ローンを利用する前に家計の見直しを

住宅ローンを利用する前にまず行うべきことは家計の見直しです。いくら返済していけるのか、単純に年収だけでは判断できません。今の生活費だと返済するのが難しそうだと思っていても、生活費を洗い出すことで使途不明金や無駄に支払っていたものが明確になり、その分を貯金や返済額に充てられる可能性もでてきます。住宅ローンを利用する目的は、お金を借りることだけではなく、住宅を購入し、その先にある豊かな生活を手に入れることではないでしょうか。家計の見直し、適切な住宅ローン額を把握し、夢のマイホームを手に入れましょう。

柴沼直美/ファイナンシャルプランナー

この記事を書いた人
柴沼直美/ファイナンシャルプランナー

この記事を書いた人
柴沼直美/ファイナンシャルプランナー

大学卒業後、保険営業に従事したのち渡米。国際経営学修士修得後帰国し外資系証券会社、投資顧問会社にてアナリスト、日本株ファンドマネジャーに従事。出産を機に講師業・FP個別相談・執筆を中心としたフリーで活動。2017年日本FP協会広報スタッフ。CFPR, 日本証券アナリスト協会検定会員 証券外務員1種 【HPアドレス】 https://caripri.com/